耐震補強にはいろいろな方法がありますが、(愛称)「丘の上の家」では、構造金物による補強、筋かいの追加による補強、石膏ボードの釘打ちなどを取り入れました。石膏ボードをビス留めではなく釘打ちとすることも、横揺れに対して粘り強い壁となるので有効です。
今回は、構造金物による補強の様子をご紹介します。

天井・壁・床をはがしてみると、既存の建物にはほとんど構造用の金物が見られませんでした。建物の内側からは、土台を基礎に固定する”アンカーボルト”と、梁を接合する”羽子板(はごいた)ボルト”くらいしか見えません。30年前の公庫仕様で建てられた建物なので、きっと外側には山形プレートなどが使われていると思われます。

アンカーボルトや羽子板ボルトは、ナットがゆるんでいるところもあるので、一つずつ確認しながら締め付けていきます。

耐震性を高めるため、改修範囲の柱や筋かいすべてに、構造金物を取り付けていきます。

筋かい金物は、なるべく梁・柱・筋かいの3点で固定できるボックス型を使用しています。
柱には、それぞれN値計算で求めた強度を満たす金物を取り付けていきます。N値計算とは、簡易的に引張力を算定して接合金物を選定する方法です。地震によって柱が引き抜かれることを防ぐため、引き抜き力がかかるところには、強度の高い金物を取り付けなくてはなりません。
上の写真では、右側(コーナー)の柱の方が強度の高い金物を使用しています。

構造金物は、上下セットで同じものを使用します。

柱の接合金物との取り合いで、ボックス型の金物が付けられない筋かいには、柱と筋かいの2点で留めるタイプのL型の金物を取り付けます。

胴差(どうさし)や梁の継手(つぎて)部分は、”短冊金物(たんざくかなもの)”で補強しました。これで、地震の揺れで継手がはずれてしまうことを防げます。
これらの構造金物は、このあと壁や天井を仕上げてしまうと見えなくなってしまいますが、地震によって柱や梁が抜けたり、接合部がはずれてしまうのを防ぐ大事な役割を担ってくれます。